約 933,121 件
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/496.html
アンブレラヌードル アンブレラ社は食品も手掛けている。味の方も上々との評判。
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/155.html
◆Q65Npbnq3U 話数 タイトル 登場人物 004 零を視る者 雛咲深紅、ヨーコ・スズキ、ゾンビ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/338.html
ショットガンの弾@現実 12ゲージ口径の各種ショットガンに使用する弾薬。 幾つかタイプがあり散弾とスラグ弾が代表的な物。 外見は緑色の厚紙箱かスチール製の軍用弾薬ボックスに入っている。
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/220.html
■ジム・チャップマン……12 005 Retry? 006 あそぼう 043 Implication 063 完全なる傲慢者 073 罪物語‐ツミモノガタリ‐罰物語‐バツモノガタリ‐ 077 Collapse 098 今日も僕は殺されるOpen Your Eyes 105 ワルタハンガBlaze Of Glory 115 春のかたみ 129 Survivor ――Eye of the Tiger―― 138 ゼロの調律 145 最後の詩 ■ヨーコ・スズキ……1(8) 004 零を視る者 019 戦士の心 035 休息 053 Doppelganger 088 エレル――ELEL―― 110 隠し件 111 今はそれどころではない 112 PITCH BLACKDEAD SPACE 137 Against the Wind ■ケビン・ライマン……9 028 夕闇通り探検隊 038 暗闇通り探検隊 047 Creep 056 Vicious Legacy 075 メトロ・サヴァイブ 085 FIGHT THE FUTURE 090 その誇り高き血統 098 今日も僕は殺されるOpen Your Eyes 105 ワルタハンガBlaze Of Glory
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/223.html
輝き 死の舞踏会で自分好みのダンスパートナーに巡り会えた事は幸運以外の何物でもない、筈だった。 先端から取っ手まで見れば、己の身長程もありそうな巨大な鋏を軽々と操る金髪の少年。 目からは狂気が溢れ出し、それでいながら理性をも同居させている。あの日野からだってここまでの狂気は感じられない。 殺人クラブで数々の人間を殺してきた岩下明美も、流石にこれほどの獲物は味わった事がない。 極上の獲物を前に、彼女の胸はまるで恋心を抱いているかのようにときめいていた。 (恋のときめき……うふふ。それも悪くないわね。けど、この年の差は犯罪かしら?) サイレンが、鳴り響く。共鳴するかのように建物が揺れた。 どこか悲しげな遠吠えにも聞こえるそれは、風情などは欠片も無いものの、上演開始のBGMとしては妙に相応しく思えた。 全てのお膳立ては整えられた。後は、心行くまでダンスを楽しむだけ…………だったのだが。 明美が一歩踏み出そうとした正にその瞬間、舞台は開幕を待たずして暗転を始める。 (な、何なの?!) 明美も、少年も、状況が掴めず周囲に視線を巡らせるが、 彼女達の動揺などお構い無しに、闇は急速に広がり、世界を包み込んでしまった。 唐突に訪れ、そして一向に去ろうとしない暗闇、そして静寂。 目の前に手をかざしても何も見えない。数センチ先の手の動きが把握出来ない。完全なる闇だった。 いや、それは単に目が慣れていないだけの事なのかもしれない。 だが何にしてもこんな状況ではダンスに興じる事など到底不可能だ。 (ちょっと、どういうこと?!) 明美は心の中で怒鳴りかける。 わざわざルーベライズに願ったというのに、これでは折角のダンスが台無しだ。 それともこれがルーベライズより降りかかった不幸だというのか。 理性のある人間に出会えた代償が、ダンスのおあずけを喰らう事か。 そんな事で願いが叶ったと言えるのか――――見当違いの怒りがぐるぐると巡っていた。 それどころではない事には、間も無く気付かされるのだが。 「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ」 廊下に木霊したのは、声変わりもしていない子供特有の甲高いテノール。 あの狂気を孕んだ目で笑う少年の顔が見えるかのようだった。 明美は咄嗟に拳銃を前方に向けるが、笑い声は廊下全体に反響し、位置が掴めない。 銃身は揺れていた。明美が感じているプレッシャーを表しているかのように。 額から汗が流れ落ち、目に入る。慌てて拭うも、今は目が霞んでいるのかどうかも分からない。 「お姉ちゃん。見えないの?」 唐突に問い掛けてきた笑い声。明美は返答に窮した。 「見えないの?」とは――――この暗闇の中でも少年には見えているとでもいうのか。 明美が何らかの答えを出すよりも早く、ズズッと金属が擦り合う音が耳に届き、 ジャギン! 続け様に、あの巨大鋏特有の音が響いた。 廊下の左端だった。鋏から火花が飛び、少年の顔がほんの1コマ、暗闇に浮かび上がった。 目が反射的に少年の姿を追いかけたが、既にその場は暗闇が支配していた。少年の姿は見えない。 背筋にも嫌な汗が広がりYシャツを濡らし出す。 思わずジリっと一歩後退りをした明美に、再び笑い声が問い掛けてきた。 「見えないんだよねえ? おねえちゃん?」 ジャギン! ジャギン! ジャギン! 今度は右端からだった。 鋏を打ち付ける度に火花で浮かび上がる少年の視線は、 彼から見れば闇に溶け込んでいる筈の明美の目を確かに捉えていた。 (こいつ……?!) 明美は確信する。この少年は見えている、と。そして逆に、明美は見えていない事を確信された。 つまりは、ダンスに興じる事が出来ないのは明美一人で、相手は何ら支障を来さず踊り明かせるのだ。明美の息の根が止まるまで。 ルーベライズの不幸とは「おあずけ」などではなかった。この「暗闇」だ。――――思わずそう考えた。 (……ま、まずいわ) Yシャツはべったりと背中に張り付いていた。 心地よかった緊張感は、内臓を握り潰すかのような圧迫感へと変わっていた。 彼女本来の美貌は、焦燥の余り醜く歪み見る影も無くなっていた。 その表情がお気に召したのか、少年はまたヒャッヒャッヒャッと笑い出す。 「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ」 笑い声は次第に大きくなってきていた。 近付いてきているのだ。 ゆっくりと。ゆっくりと。反響する笑い声に足音を隠しながら、確実に近付いてきている。 先程までの様に鋏を打ち付けないのは、火花で居場所を悟られない為だろうか。 確かに自分は拳銃を持っているのだから、それは正しい判断かもしれない。 理性のあるパートナー。自分自身の望んだ事だったが、今はその理性に恐怖を覚えていた。 いつの間にか喉が渇ききっていた。唾液すら枯渇したかのように、口の中はカラカラだ。 身体能力だけを見れば、所詮明美はただの高校生。視覚を奪われては戦う術がない。 今手に持っているのは拳銃とメスだが、見えない相手に拳銃を撃っても当たるとも思えない。 メスをやたらめったら振り回しても、あの巨大な鋏はメスの間合い外から悠々とこちらを切り裂く事が出来るだろう。 では逃げるか。それも難しい。暗闇で方向も分からない中での鬼ごっこ。逃げ切れる訳がない。 逃げる側が目隠しをしている目隠し鬼など勝負は決まっている。 明美は頭をフル回転させ様々な策を考えた。 だが、これまで人を死に追いやってきた幾つもの経験を走馬灯のように思い出しても、 どれもこれもこの状況では使えないものばかりだった。 トンッ 明美の左肩に軽く何かが触れる。ビクりとしてつい振り返り、そこに左腕を擦り付けてしまった。 摩擦により走る痛み。しかしその感触で触れた物が壁だと分かった。 後退りを繰り返し、いつの間にか左の壁際まで寄っていたらしい。 (壁…………壁? ……廊下! そうだわ!) 一筋の閃き。 壁の感触を頼りに廊下の造りをイメージすると、明美は右手に持っていた拳銃を前に向けた。 直ぐ様廊下の左側、中央、右側に向かいパン、パン、パンと銃弾を撃ち込んだ。当たればラッキー程度の威嚇射撃だ。 同時に身体を翻し、右手で壁に触れ、壁伝いに走り出した。 要は明かりだ。明かりを確保すれば良いのだ。 この先には自分が降りてきたエレベーターがある。 そのエレベーターには、先程僅かだが確かに明かりが点灯していた。 壁伝いならば見えない廊下でも正確にエレベーターまで辿り着ける。 エレベーターを開けば、そしてその明かりで少年の姿を照らし出せば、自分もまだダンスを踊る事が出来る。 背後から笑い声も足音も聞こえてこなかった。威嚇射撃がたまたま当たったのだろうか。 いや、今はそれを考えるよりもエレベーターが優先だ。 その確認は明かりを確保してからで良い。 右手の触れる壁の感触が変わった。おそらくは扉だ。確かに廊下のこちら側には幾つかの扉があった。 明美は足を止め、逡巡する。もしもここが部屋なら電灯のスイッチは扉のすぐ側にある筈。 しかし、病院の扉は部屋に繋がっているとは限らない。 扉の先がまた廊下である場合も多々あるし、また、部屋であっても電灯が点くとは限らない。 ここは確実に点いていた明かりを求めるべきだ。 足音が聞こえた訳ではないが、立ち止まっていた分だけ距離を詰められた気がする。 そんな疑心暗鬼に駆られ、明美はもう一度右側に向けて銃を撃ち、走り出した。 一瞬、七不思議の無限に続く廊下が脳裏を過ぎったが、そんな恐怖心を無視し、明美はひたすらに走った。 右手が宙を押した。壁の終わり。つまり、曲がり角。ここを曲がればエレベーターだ。 バランスを崩しながらも右を振り向くと、エレベーターの階数表示のランプが目に飛び込んでくる。 距離感が全く掴めないが、ランプは1を示している。最後に使用したのは自分なのだからそれは当然の事。 あの下がエレベーターだ――――明美は両手を前に突き出しながら階数表示の下を目掛けて走り込んだ。 バンッと大きな音を立てて両手が金属の壁にぶつかる。間違いなくこれはエレベーターの扉だ。 笑い声も足音もまだ聞こえない。今の内にスイッチを押さなくては。必ず近くにあるのだ。必ず。必ず―――― 「あった!」 明らかに周りとは違う材質の突起物が手に触れると同時に、明美はそれを連打した。 扉はゆっくりと開き、中から薄く漏れた明かりが明美を照らす。笑い声も足音もまだ聞こえない。 「やった…………え?!」 開こうとする扉を尻目に振り返ろうとして、視界に何かが入った気がした。 エレベーターの中に何かが居た気がしたのだ。 気のせいかとも思えたが、どうしても気になり明美は扉に向き直した。 そしてそれは気のせいではなかった。 確かにエレベーターは1階に止まっていた筈。だから誰かが乗り込んでいる隙なんて無かった筈。 しかし、エレベーターの中には顔の膨らんだナースが2体、手前と奥に乗っているではないか。 のっぺらぼうのナース達は、それでも見えているかのような振る舞いで明美に顔を向け、機械的に鉄パイプを振り上げた。 「今更……! あんた達に用なんて無いのっ!」 明美はエレベーターに乗り込みつつ、鉄パイプを掻い潜った。 手前のナースの脇を走り抜け、首筋に正確な斬撃を浴びせる。 奥のナースに鉄パイプを振り被る暇も与えず、顔面に銃撃を浴びせる。2体の命はあっさりと絶たれた。 直後「強烈な悪寒」という形で背後に何者かの気配を感じた。 振り返った明美が見たのは、無遠慮に迫る閉じたままの巨大な鋏。 反応する事も出来ず、明美は鳩尾から貫かれた。 「あっ……ふ…………」 こみ上げる血を、そのまま吐き出した。 激痛は数秒の事。それを越えると痛みがあるのかどうかも分からなくなった。 ただ、嘔吐感だけはこれまで経験した事がない程に激しかった。 体内に入り込んだ異物を追い出そうと、内臓が最後の力を振り絞っているのだろうか。 四肢が脱力する。口からも腹からも止め処なく血が流れ出る。出血に伴い、どんどん体温が下がっていく。 前に倒れ込む身体を支える事も出来ない。いや、支える必要も無かった。 明美は既に、鋏で支えられているのだから。 自分を貫きながら笑っている――――もう笑い声すら明美の耳には届かないが――――少年と目が合った。 そして、明美もまた、微かに微笑んだ。 (…………まだ、よ…………!) 最早指先1つ動かせない状態にも関わらず、明美はまだ諦めていなかった。 そう、まだ切り札がある。 彼女が持つルーべライトのパワーストーン。 願うだけで何でも望みが叶うこの石さえあれば、どんな状況に陥ろうとも巻き返せるのだ。 ある意味無敵のこの石をダンスパートナーに使用するのは野暮だとは明美も思うのだが、 ここまで追い詰められては四の五の言ってはいられない。 薄れ行く意識を勝利への執念で呼び戻し、明美は願った。 (こいつを殺して! 鋏も邪魔! それから私を治すのよ!) 般若の形相を作り、生への渇望を込めて、明美は願った。 しかし――――ルーベライズは輝かない。明美の望む輝きを見せてはくれなかった。 (…………え? 何で…………なん、で……?) 意識は再び薄れ行く。次は呼び戻せない。不思議とその実感があった。 明美はもう一度、いや、何度も願った。首にかかったルーベライズに向けて、必死で願った。 冷静な思考など出来はしない。それでもとにかく、殺して! 殺してよ! こいつを殺しなさい! それだけを願い続けた。 キラリ (……あ!) 今、確かに輝いた。 ルーベライズに願いが届いた証の輝きが見えた。 これで願いが叶う。これで、助かるのだ。 キラリ (……あ、れ? ……え?) しかし、明美の希望は次の瞬間、絶望の底に叩き落とされた。 輝いたのはルーベライズではない。その下。自分の腹から突き出ている鋏だった。 今、少年が鋏を動かした為、それが僅かな明かりを反射して輝いただけの事だったのだ。 ギンッ 駄目押しを与えるかのように一際残酷な輝きを帯びる鋏。 少年はキャキャキャキャと笑いながら、取っ手を勢いよく左右に開いた。 鋏の突き刺さっている傷口がミチミチミチとグロテスクな音を立てる。 明美の身体は何の抵抗も出来ずに押し広げられ、真っ二つに切断――――いや、千切り飛ばされた。 潰れた臓物と砕けた骨を撒き散らしながら、明美はエレベーター内に転がり、崩れ落ちた。 (……まっ……て………………なん、で…………) 身体を半分にされても、明美の意識はまだ微かにだが残されていた。 彼女が最期に考えた事。それは、ルーベライズへの願い事ではない。 ルーベライズが願いを叶えてくれなかった理由だった。 願いさえ叶っていれば、こんな結末にはならなかった筈。 何故願いは成就されなかったのか。何故。何故。何故―――― (……な…………ん………………) 自らの血溜まりに、意識は沈んでいく。もがく事も、もう出来ない。 おそらく明美には、願いが叶わなかった理由にはどれだけ考えても辿り着けないだろう。 ルーベライズには明美も知らない、しかし、考えてみれば当然とも言えるルールが存在したのだ。 それは、ルーベライズは「もたらされた不幸を打ち消す様な願いは受け入れない」というルールだ。 もしも石への願いで石からの不幸を打ち消せたらどうなるか。もしも石からの不幸を克服出来るのならどうなるか。 その時は、この石は不幸を克服した誰かの所有物となり、他の人間の手に渡る事は永遠に無いだろう。 不幸さえなければ、幸運しか訪れないのなら、石を手放すだけの理由は誰にも生まれないのだから。 逆説的には、不幸を打ち消せないからこそ、石は明美の手に渡ってきたという事。 今回明美の願いの代償としてもたらされた不幸とは、明美の判断した「暗闇」ではなく、少年――エドワードそのものだった。 つまり、エドワードから逃れるような願いを石が叶える事は絶対に有り得なかったのだ。 これが、明美の辿り着けなかった答え。願いが届かなかった答えだ。 ジャギン! エドワードはたった今自分が真っ二つにした少女の首を斬り飛ばした。 首は壁にぶつかりコロコロと転がって、閉まりかけてたエレベーターの扉に挟まった。 ガコンと音を立てて、扉はおっくうそうに再び開き出す。 その様が可笑しかったのだろう。エドワードはキャッキャと笑った。 しばらくの間、血に染め上げられたエレベーター内に愉快そうな声が響き渡っていた。 ひとしきり笑うと、エドワードはお目当ての物に近付いた。 少女の首にかかっていた、絶大な魔力の感じられる石。これさえあれば自分は魔力を取り戻せる筈だ。 わくわくしながら石を拾い上げたエドワードは――――ん? と首を傾げた。 確かに石からは絶大な魔力を感じられる。 しかし、どうやって魔力を引き出せば良いのか。その方法が分からなかった。 石を掲げてみたり、明かりに照らしてみたり、両手で擦ってみたり。 色々試したが、やはり魔力は引き出せない。 やがて諦めたエドワードは石をポケットにしまいこんだ。 鋏を出した分だけ魔力を更に消費してしまったが、焦る事は無いのだ。 魔力の源は自分の手にある。ゆっくり時間をかけて石から魔力を引き出す方法を見つければ良い。 それまでは哀れな少年エドワードを演じていても良いし、 この少女の様な頼りにならなさそうな人間が居たなら「遊んでも」良いだろう。 チラリとエレベーターの置石となっている首を見て、エドワードはそう思った。 (それじゃあ、これからどうしようかな?) エドワードは思考を切り替える。 この病院では二人の人間と出会った。探せばまだ誰か居るかもしれない。 しかしこれだけ騒いで誰も来ないのだから、居ない可能性も充分ある。 院内を見回ってみようか。それとも病院から出て行こうか。 とりあえずは――――――――廊下から湧いて出てきているナース達と「遊んで」から考えようか。 ジャギン! ジャギン! ジャギン! ジャギン! ジャギン! ジャギン! 【B-6アルケミラ病院一階エレベーター内/一日目夜】 【エドワード(シザーマン)@クロックタワー2】 [状態]:健康。魔力が更に減っている。 [装備]:特になし。 [道具]:『ルーベライズ』のパワーストーン@学校であった怖い話 [思考・状況] 皆殺し。赤い液体の始末。 基本行動方針:人の中に紛れて機会をうかがう。 1:魔力を取り戻す為、石から魔力を引き出したい。 2:病院内を見回るか、それとも出て行こうか。 3:か弱い少年として振る舞い、集団に潜む。 4:相手によっては一緒に「遊ぶ」。 ※魔力不足で変身できません。が、鋏は出せるようです。(鋏を出すにも魔力を使用します) ※エドワードは暗闇でも目が見えるようです。魔力によるものか元々の能力なのかは不明です。 ※『ルーベライズ』のパワーストーンに絶大な魔力を感じていますが、使い方は分かっていません。 石から魔力を引き出して自分の魔力に出来るのかどうかは不明です。 ※病院廊下は明かりが無ければ真っ暗闇です。目が慣れれば少しは見えるかもしれません。 バブルヘッドナースの死体が幾つかあります。 ※エレベーター内には明美のバラバラ死体と武器の詰まった学生鞄、バブルヘッドナースの死体×2と鉄パイプ×2があります。 ガコン――――ガコン――――ガコン――――ガコン―――― 岩下明美の首がエレベーターの置石となって、どれ程の時間が経過しただろう。 明美の瞳は虚ろに開き、一定感覚で迫る扉を眺めていた。 ガコン――――ガコン――――ガコン――――ガコン―――― 扉に押され、壁に挟まれ、扉が開けば扉の溝に沿って転がり、 また押され、挟まり、転がり、押され、挟まり、転がり……。 ルーチンワークに抗う事も出来ず、明美は扉を眺めていた。 ガコン――――ガコン――――ガコン――――ガコン―――― その瞳に宿るのは、ほんの僅かな光。消えかかっている蝋燭の炎よりも、更に小さな光。 明美はまだ生きていた。首だけになりながらも。惨めな置石となりながらも。まだ意識が残されていた。 ガコン――――ガコン――――ガコン――――ガコン―――― 一度沈んだ意識が戻った訳ではない。ただ、意識が沈みきる寸前で、明美の想いが願いとしてルーベライズにより叶えられただけだ。 明美自身には石に願ったつもりなど毛頭無かったが、石は願いを受け入れた。「まって」という願いを受け入れた。 その願いを拒否する理由は見受けられなかったから。 ガコン――――ガコン――――ガコン――――ガコン―――― 「幸せの石・ルーベライズ」によりもたらされた延命治療。 石は明美が死ぬのを「待って」くれた。 果たしてこれは幸運によるものなのか、不運によるものなのか。 それは明美だけが知っている。明美だけが判断する事なのだろう。 ガコン――――ガコン――――ガコン――――ガコン―――― どちらであろうとも、もう明美の手元にはルーベライズは存在しない。 どちらであろうとも、もう明美の願いではルーベライズは輝きはしない。 暗い意識の中、明美は扉を眺め続けた。 運命は、決まっていた。 【岩下明美@学校であった怖い話 死亡】 back 目次へ next 暗闇通り探検隊 時系列順・目次 怪人・デカおじさん2 暗闇通り探検隊 投下順・目次 怪人・デカおじさん back キャラ追跡表 next 魔王と邪神 岩下明美 死亡 魔王と邪神 エドワード(シザーマン) クローズアップ殺人鬼
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/213.html
■前原圭一……8 009 新しい風 019 戦士の心 035 休息 053 Doppelganger 088 エレル――ELEL―― 110 隠し件 111 今はそれどころではない 112 PITCH BLACKDEAD SPACE ■古手梨花……8 010 伝染神(うつりがみ) 045 Self question 066 A Distinctive Comrade 083 Courage point 095 風海純也の考察物語 103 Phantom 119 Edge of DarknessSecret Window 145 最後の詩 ■鷹野三四……9 014 邪神達の胎動 054 彷徨える大罪 070 Sensible solution = Realistic Conception 100 噛み合わない「世界」 101 リセット 112 PITCH BLACKDEAD SPACE 134 The FEAST 1The FEAST 2 137 Against the Wind 145 最後の詩 ■園崎魅音……2(2) 018 追跡者 055 ALONE IN THE DARK 060 たとえそれが損なわれていたとしても 091 Night of the Living Dead ■園崎詩音……4 023 ディアハンター 064 魔弾の射手 069 ジェノサイダー 073 罪物語‐ツミモノガタリ‐罰物語‐バツモノガタリ‐ ■竜宮レナ……2(2) 018 追跡者 055 ALONE IN THE DARK 086 傀儡とキリングフィールド 087 生まれ変わったら双子がいいね
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/409.html
その誇り高き血統 (一。……古の地を、犯すべからず…………) 夜見島の漁師達と比べても見劣りのしない程に立派な体躯の警察官。 そんなケビンに肩を貸すともえの姿は、傍から見れば酷く滑稽に映るのかもしれない。 今のともえは、預けられる体重を何とか支えているとは言え、まともに歩けているとは言い難く、 気を抜いてしまえばのしかかる重さにすぐにでも潰されてしまいそうだった。 歯を食い縛りながらゆっくりと一歩ずつを踏み出して進む。 その度に、決して大きくはない身体には負担がかかった。 草履の鼻緒に食い込む指又が徐々に痛みを訴え始め、進む程に辛さは増していく。 改札口に先行して安全の確認をしているジルの背中が、距離以上に遠くに見えた。 後何歩であそこまで到達するのか。後どれ程このまま歩かなくてはならないのか。 そんな弱気な考えが頭をもたげてくる。 ケビンの体重を支えながら歩く事は、肉体的にも精神的にも想像以上に過酷な重労働だった。 (一。……光を恐るる者は、古のものの、使いなり。誑かされる、べからず…………) それでもともえは、今はこの役目を投げ出したくはなかった。 身体の悲鳴は極力聞こえない振りをして、しっかりと前を見据えて歩を進めた。 今は、何かをしていなくては、後ろを振り返ってしまいそうだったから。 後ろを振り返ってしまえば、折角堪えてきた涙が流れ落ちてしまうから。 (一。……海に潜みし、穢れに……。穢れに…………) 漏れかけた嗚咽。必死に喉に力を込めて食い止める。 昇ってきた階段を振り返れば、まだそこに父、常雄が居るような気がしていた。 そう。先程のあれは、常雄だった。 直接姿が見えたわけではない。だが、ともえには『視えた』。 電車の中。あの亡霊共が消え去った直後。 今にも泣き出しそうな自分自身の顔が。その顔に優しく差し伸べられていた二本の腕が。 まるで誰かの視界から見ているような感覚でともえには『視えた』のだ。 (お父、様っ……) 『視えた』映像が気のせいや勘違いとは不思議と思えなかった。 奇妙な確信と実感がある。 自分に差し伸べられた腕。 あの場で感じた優しい温もり。 それらは、確かに常雄のものだった。 自分の危機を救ってくれたのは常雄だった。 そんな確信と実感が確かにあるのだ。 (一。……海に潜みし穢れに用心し、妊み女を決して、海にいれるべからず…………) それは同時に、常雄の死を受け入れてしまったという事でもある。 島の皆を探そうと決めた矢先の、残酷な再会。 決してそんな再会は望んではいなかった。出来る事なら力を合わせ、この怪異に立ち向かいたかった。 しかし常雄は既にこの街で、或いはあの津波で、命を落としてしまっていた。 そして、列車と共に闇の中に消えて行ってしまった。 力を合わせて共に戦う――――その望みはもう叶う事のない御伽話なのだ。 (一。……赤子生まれし、ときには、滅爻樹に、名を、書き連ねよ…………) それでも、そうは理解していても、振り返ればまだそこに常雄が居るような気がしていた。 その気持ちは、甘えに過ぎない。 常雄に居て欲しいと願うともえの心から来るただの甘えに過ぎないのだ。 だからこそ、ともえは今は振り返る事は出来ない。 後ろ髪を強く引かれているが、未練はすぐにでも断ち切らなければならない。 常雄が居なくなってしまった今、太田家の総領は自分だ。 太田家の誇りと使命を受け継ぎ、夜見島の皆を率いて『穢れ』に対峙しなくてはならないのは自分なのだ。 悲しみに沈んではいられない。未練に心を縛られて挫けている暇などあろうはずがない。 心を強く持たねば、加奈江には。穢れには。そしてこの事態に立ち向かう事など出来るわけがないのだから。 (一……人死にの際には、葬儀において、滅爻樹を用いること、忘れるべからず…………) 総領としての自覚を己の心に刻み込む様に。 ともえは、太田家秘文の伝書に記された『命』を、頭の中で諳んじる。 繰り返し、繰り返し、諳んじる。 父への想いはこの場に置いていくつもりで、ともえは一歩、一歩、階段から離れ、改札口に近付いた。 背後に浮かび上がっている気がしている父の幻影を頭から振り払い、ともえはケビンを先に改札口を通した。 ――――「 」―――― 聞こえるはずのない言葉を背中に受けて、ともえは改札を抜けた。 涙が一筋だけ頬を伝い、アスファルトに落ちた。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 眼前に広がるのは、赤一色の湖だった。 常識とはあまりにもかけ離れた狂気じみた光景は精神にストレスを与えるものだが、 ケビンも、ジルも、ともえも、然程驚きは感じなかった。 良い事なのか、それともそうではないのかは分からないが、この事態に3人共慣れてきてしまっているようだ。 「地図の真ん中の湖はこれなんでしょうね。 それならやっぱりここはC-3の駅って事で良いみたいね」 「いくらなんでも濁りすぎじゃねえか。こんなんじゃバリーだって敬遠するぜ。 ヴィクトリー湖と違って観光客は呼べそうにもねえなこりゃ」 「案外その辺で竿投げてるかもしれないわよ? ケンドと一緒に」 「へっ、あの釣りバカ達ならそれもあるかもな。 まあ、あいつらも迷い込んでるなら合流したいところだが、そうじゃねえ事を祈るか」 「それはもう切実にね。……それよりどうするの? とりあえず現在地の見当はついたけど」 この湖は改札を抜けた正面に見えていた。 つまり現在地はC-3の駅の東側。目的の警察署はこの道を北に進み、右手の跳ね橋を渡った先だ。そこまでは間違いないのだが――――。 3人は道の南側を振り返った。そちらの方向には、小さな明かりが朧気ながら見えていた。 その明かりはともえ曰く、提灯という照明具の明かりに似ているらしい。 ともえの見立てが正しければその場所には生存者が居るという事になる。 もしそうならば、ジルやケビンの心情としては救出に向かいたいのだが、 正直今の彼等の状態で満足な救出活動が行えるとは思えない。 生存者がジル達のように戦闘を行える人物ならばありがたいが、 ともえのように保護の対象であるならばとても手が回らないだろう。 更に言えば明かりは先程のラクーン駅でのように建物の照明に過ぎないという可能性もある。 その場合はただの無駄足にしかならず、ケビンの事を考えれば文字通り致命的なタイムロスになりかねないのだ。 明かりに向かうか。警察署に向かうか。 どちらの選択肢を選ぶにしても、メリットもデメリットも同じくらいには存在するだろう。 (やれやれ、さしずめライブセレクションって言ったところかしらね……) ジルは一つ、小さく溜息を吐いた。 【C-3/C-3駅の改札付近/一日目夜中】 【太田ともえ@SIREN2】 [状態]:身体的・精神的疲労(大)、ケビンに肩を貸している、この事態に対する怒り [装備]:髪飾り@SIRENシリーズ [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:夜見島に帰る。 1:夜見島の人間を探し、事態解決に動く。 2:ケビンたちに同行し、状況を調べる。 3:事態が穢れによるものであるならば、総領としての使命を全うする。 ※闇人の存在に対して、何かしら察知することができるかもしれません ※幻視を体感しましたが、自在に使用出来るかどうかは後の書き手さんに一任します 【ケビン・ライマン@バイオハザードアウトブレイク】 [状態]:身体的疲労(中) 、左肩と背中に負傷(左腕の使用はほぼ不可)、T-ウィルス感染中、手を洗ってない、ともえに肩を借りている [装備]:ハンドライト [道具]:法執行官証票、日本刀 [思考・状況] 基本行動方針:救難者は助けながら、脱出。T-ウィルスに感染したままなら、最後ぐらい恰好つける。 1:また選択かよ。 2:警察署で街の情報を集める。 ※T-ウィルス感染者です。時間経過、もしくは死亡後にゾンビ化する可能性があります。 ※傷を負ったためにウィルス進行度が上がっています。 ※左腕が使用できないため『狙い撃ち』が出来なくなりました。加えて精度と連射速度も低下しています。 ※闇人がゾンビのように敵かどうか判断し兼ねています。 【ジル・バレンタイン@バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ】 [状態]:疲労(中) [装備]:ケビン専用45オート(装弾数3/7)@バイオハザードシリーズ、ハンドライト [道具]:キーピック、M92Fカスタム"サムライエッジ2"(装弾数0/15)@バイオハザードシリーズ M92(装弾数0/15)、ナイフ、地図、ハンドガンの弾(24/30)、携帯用救急キット、栄養ドリンク [思考・状況] 基本行動方針:救難者は助けながら、脱出。 1:明かりに近付く? それとも警察署に向かう? 2:どこかでケビンの傷の処置をする。 3:警察署で街の情報を集める。 ※ケビンがT-ウィルスに感染していることを知っています。 ※闇人がゾンビのように敵かどうか判断し兼ねています。 back 目次へ next FIGHT THE FUTURE 時系列順・目次 たとえそれが損なわれていたとしても せめて一度くらい、幸せな夢を見させて 投下順・目次 Night of the Living Dead back キャラ追跡表 next FIGHT THE FUTURE ジル・バレンタイン 今日も僕は殺される FIGHT THE FUTURE 太田ともえ 今日も僕は殺される FIGHT THE FUTURE ケビン・ライマン 今日も僕は殺される
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/190.html
DOG 男と少女に追いつくのは容易い。しかし、それで問題が解決しないのは、犬にももうわかっている。 ヒトであろうと、ヒトでなかろうと、生あるものは痛みによって学ぶ。 犬は無策の襲撃を断念し、ただ追跡を続ける。重要なのは、あの少女と共存することだ。 無闇に異端を襲うことではない。 二人はとある民家に入った。犬も侵入するべきかどうか悩んだが、さすがに見つかるだろう、と見切りをつけ、 その家屋の外壁に耳を押し当てるだけに留めた。聴覚の精度も向上しているらしく、中の様子が手に取るようにわかる。 いつもの殻と比べ、この殻は存外使い勝手がよい。 『そこにいるのは誰だ』 『ひっ……!』 あの男の誰何に、別の男が怯えを示す。どうやら先客がいたようだ。 『おまえ、求導師の……』 『……その声、美耶子様……ですか?』 少女と先客は面識があるらしい。犬もその人声には覚えがある。 たしか、いつもおどおどしていて、みっともない――そんな人物だった。 『知り合いなのか?』 『一応な』 もっとも、そこまで深い関係でもなければ、いい関係でもない。 儀式の運営をする男と、その儀式から逃げ出した少女。 犬が男の立場だったら、殺しまではしないだろうが、一発張るくらいはしただろう。 『………………………見ぃつけた』 その声を犬の耳が拾うのと、ガラスが割れるのはほぼ同時だった。 漂ってきたわずかな死臭と、独特の臭気から、犬は自分の同族だと察する。 位置はここと反対の外壁のあたりだ。あの求導師もまた追われていた――そういうことだろう。 『君達は逃げろ!』 『でも……!』 『早く!』 男に急かされたせいか、そこから二種類の足音が発せられ、次第に遠のいていく。 扉の開く音が聞こえ、犬の視界の隅でふたつの黒い服が踊る。 目的の少女と、腑抜けの求導師。つまり、自分を屠った男と、同類はまだ民家の中ということになる。 犬は耳の後ろを足でぽりぽり掻きながら、黙考する。 普通ならさっさと目標に疾駆し、腰抜けを黙らせ、殻をいただくところだ。 しかし、その後に屋内の男が殻や自分を破壊する可能性がある。 生命力の強さには自信があるが、さすがに体を木っ端微塵にされては、再生のしようがない。 同族があの男を殺し、同化してくれるのが理想だが、おそらく無理だろう。 現に、本調子ではないとはいえ、自分が手傷をまったくつけられなかったのだから。 老朽化した壁を突き破り、目の前で黒い何かが跳ねた。 光を怖れ、闇へと逃れるための黒装束。 「た、助け…………」 血を垂れ流し、同類は懇願するが、遅れて庭に出た男がしたのは処刑だった。 目にも止まらぬ蹴りが人面に突き刺さり、頭部を粉砕する。 同族の握っていた傘が、ぽたりと芝生に落ちた。 「これで……。いや、まだか」 息荒く呟く男が犬に気づいたらしく、銃をそちらに構えた。 犬は一瞬どうするか考えたが、とりあえず相手に噛みつくために跳びかかる。 「このっ……!」 拳銃とは便利に見えて、実はそうでもない。 敵を見つけ、構え、狙い、撃つ――――そのプロセスがなければ射撃は成立しないのだ。 すなわち、通常の的である人間より小さく、素早い対象に対しては、いくらかの遅延時間が発生する。 野性か経験か。どちらにしろ、犬の選択はそこまで間違いではなかった。 常人の体術など高が知れている。武器のない一般人に対して、犬はある程度のアドバンテージがあるのだ。 そう、一般人なら。 男は潔くハンドガンを捨て、右脚を勢いよく振るう。 それは脳漿を撒き散らしながら犬の顔面を正確に捉えた。 犬の視界と思考は一瞬にして暗転し、自分がどこにいるのか、自分が何なのかさえ分からなくなってしまう。 犬と足、双方の運動エネルギーが衝突し、その破壊力は想像を絶する。 頭部の変形した犬はそのまま近くの犬小屋へと吹っ飛んだ。 本来、犬を受け入れるそこにそれ程の耐久力はなく、犬の頭と同様に破壊されてしまう。 「ん? ……これは」 木片と砂埃舞う中、何とか機能を失わずに済んだ視覚で犬は男を見つける。 その手は骨のような何かを拾っていた。犬は赤黒い視界の中で、男が自身を凝視しているのに気付き、対策を考えるが、 結局、無言で横臥を続けることにした。直に回復するとはいえ、ここまで戦力差が圧倒的では、戦う意味がない。 その死んだふりをどう受け取ったのか、男は犬から視線を外し、どこかへと走っていった。 犬は男の位置が嗅覚と聴覚の範囲外になったのを契機に立ち上がる。 まだ全快には程遠い。再生速度が遅すぎるのだ。 仮に治癒が完了したとしても、ここまで戦力の格差があっては、襲撃しても無駄だろう。 「ギギギ…………」 犬は復活しようと躍起になっている黒装束に近寄る。 問題は単純だ。力が足りない――ただそれだけのこと。 ならば、力を得ればいい。最も原始的な方法で。 犬は慎重に、だが確実に同族に肉迫し、その喉笛に牙を突きたてた。 「グゲゲ…………!」 悲鳴が上がったが、出血がすぐに気管を征服し、やがてぼこぼこと音を立てるのみとなる。 捕食は生物の基盤である。相手の血肉を自身のそれと同化させ、自己の一部とする。 能力の獲得や飢餓の解消――理由や結果はどうであれ、今日までの生物は、多かれ少なかれそうして生存している。 ならば、犬の行動は当然とも言える。 殻を食し、中身の精神を吸収する。 その行為は自身の能力の向上、すなわち単純な強化を意味するからだ。 同族のすべてをその胃に収めた頃には、犬はもう完全に回復していた。 いや、それどころかその身を包む闇が増し、傍目からでも成長が窺える。 犬もそれを肌で感じており、溢れる力を遠吠えによって表現してみせた。 その上で、犬は悩む。 男の始末と少女の殻。 どちらを優先するか。 血に染まった傘に、犬はまったく興味がなかった。 【A-2/給水施設付近/一日目・夕刻】 【ハリー・メイソン@サイレントヒル】 [状態]健康、強い焦り [装備]ハンドガン(装弾数10/15) [道具]弾:34、栄養剤:3、携帯用救急セット:1、ポケットラジオ、ライト、調理用ナイフ、犬の鍵 [思考・状況] 基本行動方針:シェリルを探しだす 1:学校に急がなければ! ※サイレントヒルにシェリルがいると思っています 「おい、本当にこっちでいいのか」 「さ、さあ……」 「『さあ』って、おまえ……」 「申し訳ありません……」 牧野は儀式の供物に頭を下げつつも、どこか釈然としないものを感じていた。 霧で視界は悪い上に、地図もなければ指針もない。そんな状態で『学校に行きたい』と言われても、土台無理な話だ。 だからといって、儀式のやり直しを提案しても突っぱねられるだけだろう。 どうすればいい……? 牧野は顔を伏せたまま、周囲に目を配る。 すると、見知ったものが一瞬、視界を過った。 求導師は内心で驚愕し、じっとりと冷や汗をかく。 「もういい。顔を上げろ。“見えない”だろ」 生まれつき盲目である少女は牧野の異変どころか、その原因にも気付いていないようだ。 彼はそれに安堵して額を拭い、それから彼女の手を取った。 「とりあえず目星が付きました。行きましょう」 この変異を“神の花嫁”も正確に認識できていないようだ。 ここがどこで、なぜこうなったのかわかっていれば、わざわざ村人――それも儀式の関係者――に頼ったりはしないだろう。 それくらいこの少女の村人に対する不信感は根強い。 もっとも、自分だって殺されるのがわかっているなら、その相手に対して好意的にはなれないだろうから、彼女を責めるつもりはない。 ただ、役割を演じてほしいだけだ。自分と同様に。 先程見かけたのはある男の後ろ姿だ。 彼はよく知っている人物で、一応頼りになる。 向こうがこちらを邪険に扱わなければ、の話だが。 できれば八尾さんがよかったが、この際彼でもいい。 知り合いがほとんどいないこの状況で、ある意味最も親しい存在に出会えたのだ。 ここは素直に神のお導きと受け取ろう。 宮田司郎。 我が半身の元へ。 【B-2/CS屋前/一日目・夕刻】 【牧野慶@SIREN】 [状態]健康 ヘタレ 疲労(中) 、美耶子の手を引っ張っている [装備]修道服 [道具] [思考・状況] 基本指針:もう一度儀式を行ない、変異を終わらせる。 ※ここが羽生蛇村でない事に気づいているようです。 ※儀式を行なえば変異は終わると思っています。 【神代美耶子@SIREN】 [状態]健康、牧野に手を引かれている [装備]特に無し [道具]無し [思考・状況] 基本行動方針:街から脱出する 1:とりあえずしかたがないので牧野と行動する ※幻視によって牧野の視界を借りています。 ※ここは羽生陀村ではないと勘付き始めています 医師を追う求導師が花嫁を連れ、向かう先は神の御許。 けれどその神、皆が知る神に非ず。 back 目次へ next IT 時系列順・目次 怪人・デカおじさん 雲上海下(うんじょうかいか)前編 投下順・目次 休息 back キャラ追跡表 next IT 神代美耶子 罪物語‐ツミモノガタリ‐ IT ハリー・メイソン 完全なる傲慢者 見ぃつけた 牧野慶 罪物語‐ツミモノガタリ‐
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/211.html
■阿部倉司……7 002 邂逅 029 困惑 044 Controversial Participation 072 混ぜるな危険 114 静かな丘のリトル・ジョン 121 My Dear Sweet SisterYou re Not Here 145 最後の詩 ■藤田茂……2(1) 007 老頭児&Rookie 048 DEEP RISING 088 エレル――ELEL―― ■三沢岳明……10 017 霧笛 049 闘争 050 Significant CommitmentHelpless Predicament 081 犬とふたりとときどき、警察署 084 屍とふたりとときどき、駐車場 105 ワルタハンガBlaze Of Glory 115 春のかたみ 129 Survivor ――Eye of the Tiger―― 138 ゼロの調律 145 最後の詩 ■太田ともえ ……12 028 夕闇通り探検隊 038 暗闇通り探検隊 047 Creep 056 Vicious Legacy 075 メトロ・サヴァイブ 085 FIGHT THE FUTURE 090 その誇り高き血統 098 今日も僕は殺されるOpen Your Eyes 105 ワルタハンガBlaze Of Glory 115 春のかたみ 127 譲らぬ決意 145 最後の詩
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/480.html
My Dear Sweet Sister 【Sun】 エドワードの事は、一旦は置いておくとして――――。 二人だけで話をしている事に何かしらの不審を抱いたのか、睨む様な目付きでこちらへと迫り、エドワードの手を引いて再び離れ行くヘザーの背中に、クローディアは感情を殺した瞳を向けていた。 クローディアの胸中には今、様々な想いが複雑に織り混ざり、暗い澱みが生じていた。 軸としてあるのは、失望。ヘザー達の会話を聞けば聞く程、自身の胸は失望の色に染まりゆく。 何故、ヘザーは分からない。 何故、ヘザーは的外れの考察を続けている。 初めから、答えは出ているというのに。 話を再開したヘザー達から視線を外し、ゆっくりと首を巡らせれば、“神の力を反映したままの世界”がその目には映った。 ――――そう。街の様相を変貌させたのは、“神”だ。 ヘザー達がどの様な推論を立て、論じ合おうとも、この一点に於いてクローディアは、確認こそしてはいないが絶対の確信を抱いていた。 確かに、ヤミジマという極東の地の島でのアベの体験は、非常に興味深い。 異形と化した死者の復活は、伝承や物語ではそれなりにありふれた話ではあるが、実例としてとなると流石に聞いたことはない。 他人の視界を借りる力や、赤い津波もそう。それらは、クローディアがどんな資料からも見聞きした事のない怪現象。俄には信じられない事ばかりだ。 恐らく、その背景にはアベの知る由もない何か特殊な力が隠されているのだろう。17年前の、或いは前回のこの街の変貌に、神の力が関わっていた様に。 だが、ヤミジマに何かが隠されている――――その推測が正しいものだとしても、それが一体何だというのだ。 不可思議な体験を切り抜けた人間がこの地に招かれたからと言って、その体験がこの街に関係しているとはいくら何でも話が飛躍しすぎている。 ヘザーはこの街の何を見ているのだろうか。 辺りには、前回の変化と全く同じものが見て取れるというのに。 ヘザーが育て、今はこの胎内に宿る神が創り出した変貌と同じものが見て取れるというのに。 何故そこに異国の怪現象が入る余地があると考えてしまうのだろうか。 そんな余地など、有り得ない。 仮に、ヤミジマに隠されているものが異教の神であるとしよう。 では、それが我らが神と全く同じを変質をこの街に施す事が出来るだろうか――――出来る筈がないではないか。それはまるで別の存在なのだから。 初めから、答えは出ている。街の様相が、既に証明している。この変貌は、神の力に因るものなのだという事を。 そもそも、ヘザーは前提からして履き違えている。 ヘザー達が先程から疑問に上げていた幾つかの謎。招かれた意味、参加者の共通点、ゲームの主催者、等々。 二人は、クローディアが遊園地で出会った少年――もう顔も名前も忘却の彼方へと消えつつあるが――の持っていた馬鹿げたチラシの話を真に受けてしまっているが、あんなものは、断じて神の創り出したものではない。 神は、人々の殺し合いなど決して望まない。神の望みはただ一つ。楽園の創造だ。 多少の破壊は伴うが、神は人々の罪を裁き、洗い流す。そして人々を許し、救い、その果てに永遠を築き上げる。 争う事もない。飢える事もない。全ての人々が、全ての苦しみから解放され、幸福の中で永遠を生きる。それが神の楽園。 その過程に於いて、人々に殺し合いを強要させ、新たな大罪を犯させようなど――――そんな事があろう筈もない。 殺し合いの強要。――――そんな低俗で愚か極まりない事をどうして神が望むと思えようか。その様な考えは、神に対する冒涜でしかないのに。 殺し合いは神の望みでは決して有り得ない。 この世界は、クローディアに与えられた試練なのだ。 聖女として。神の母胎として。クローディアが成長する為に。神を成長させる為に与えられた試練。 それを理解していれば、あのチラシや名簿が何なのかも自ずと答えは導き出される。 クローディアは知っている。神の創り出したこの世界では、人々の潜在意識が具現化する事を。 前回の出来事で、ヘザーもそれを体験した筈だ。時として、それはメモであり、ノートであり、音声であり、映像であり。街の至る所で、様々な形で出現したのだから。 あのチラシは、その程度の取るに足らない物だ。 一見、殺し合いの為に人々を呼び寄せた様に書かれていると読み取れなくはない。 殺し合いの為に重要となる街のルールを書き連ねてある様に見えなくもない。しかし――――。 1,殺せ ――――神は、殺し合いなど望まない。 2,サイレンにより、世界は裏返る ――――裏返るというのが街の変貌の事だとするならば、これは初めから神の世界の事象の一つだ。 神が反応を示したあのサイレンが何なのか。それには心当たりは無いが、少なくともサイレンに関わらず、街は変貌する。 クローディアが教会で目覚め、外への扉を開いた時、この目には、神の力を反映したままの遊園地が映った。 “神の力を反映したままの遊園地”だ。そこはサイレンが鳴る前から、“霧に包まれながらも血と錆に塗れた世界だった”のだ。 つまりは、真理をついてはいない。 3,定期的に追跡者が追加される ――――追跡者は街を跋扈する怪物達の事だろうが、これも単なる神の世界の事象に過ぎない。 4,最後の一人には、完全なる幸福が約束される。 ――――楽園を指しているのならば、見当違いだ。神は全ての人々を楽園へと導くのだから。 そこには確かに破壊と犠牲を伴う。しかし、この様な手段では、断じてない。 ルールは、根本的に出鱈目なのだ。 チラシはチラシ。所詮は単なる紙切れであり、それ以上の物では無い。神の世界に迷い込み、世界の性質を誤解した愚者の意識が具現化したといったところだろう。 そして、単なる紙切れであるのだから、招かれた理由や参加者の共通点などの謎もまた存在しない事となる。 ヘザーはルールを気にかけるあまり、あの事実にも気が付いていないのだろうか。――――或いは、忘れているのかもしれないが。 あのショッピングモールで、クローディアがヘザーを見つけ、彼女に宿っていた神の力を引き出した時。 異界と化したショッピングモールでは、クローディアやヘザーと全く無関係な人々も巻き込まれ、神の復活の為とは言え痛ましい犠牲となってしまっていたあの事実を。 無関係であろうとも、神の変化させた世界に“迷い込む”者は確かに存在する。 その逆もまた然りで、関係者や街の住人であろうとも、迷い込まない者もまた多数居る。 彼らに、差など無い。巻き込まれる者は、無作為に巻き込まれるだけであり、ここにはやはり意味や意志など何も無い。 名簿も、またルールと同様だ。 神の世界に迷い込んだ者達は、言い方を変えれば神に呼ばれし者達。 その人々の名前が。街に迷い込んでしまった者達の意識が。一枚の用紙となり、形としての体を成してしまっただけの事。 つまりは、ヘザーが重要視してしまっている『ゲーム』とは、“ルール”と“名簿”の二つが具現化してしまったが為に生じた誤解に過ぎない。 謎でも何でもなく、全ては神の世界の事象。それだけの事なのだ。 ただし、クローディアも今回の出来事全てに説明がつけられる訳ではない。一つだけ、分からない事がある。 聞けばアベは日本からこの世界に迷い込んだという。名簿にも、数多くの日系人の名が連ねられている。 その内の全員が、ではないだろうが、中にはアベと同じく日本から直接迷い込んだ者も居るのだろう。 それは、確かに『迷い込む』という事象の延長上の出来事ではある。 ルールや名簿のチラシにしても、多少特殊な形を取ってはいるが、『意識の具現化』という事象の延長上にはある。 地形の変化も同様に、『変貌』の延長上だ。 しかし、それにしても、流石にどの事象も規模が大きすぎるのだ。 神が完全な状態で誕生していたとするならばまだしも、あの時の神はアグラオフォティスのせいで弱体化していた。ヘザーに敗れ、死の淵まで追い込まれていた。 その、初期状態までリセットされてしまった筈の神が、どうしてこれ程の規模の変貌を引き起こす事が出来たのか――――分からない事とは、それだ。 クローディアは、静かに、自身の腹部に手を当てた。 神の胎動。神は今、確かに胎内に宿り、力を蓄えている。 ヘザーの話によれば、クローディアとヘザーが対峙し一つの決着がついたあの時から、今は数週間が経過しているらしい。 と言う事は、この数週間の間に一度、神が力を取り戻すだけの何かがあったのだ。 そして力を取り戻した神は神話にもあるように、楽園を創り出そうとした。しかし途中で力尽き、クローディアを蘇らせて胎内で再び眠りについた。そういう事になる。 では、神が力を取り戻すだけの何かとは、一体何だったのか。神がクローディアを蘇らせる以前に、一体何が起こったのか。 ――――分からない。クローディアには、何も思い当たらなかった。 だがそれは、特に判明せずとも良い事でもある。 クローディアの役割は、神を守る事。同時に、神を復活させる為の負の感情をこの身に集める事。 その方針に沿って行動する上では、神が一度力を取り戻した理由を知る必要性は何も無い。クローディアはただ、役割を果たせればそれで良いのだ。 そしてクローディアには、当然と言えば当然だが、自身の考察や確信をヘザーに伝えるつもりは一切無い。 クローディアが試練をやり遂げ、聖女としての役割を果たす為には、ヘザーには迷走してもらっている方が都合が良いのだ。 少なくとも、ヘザーが答えに辿り着けないでいる間は、クローディアと神に危害が及ぶ事は無いのだから。 ただ――――クローディアは、再びヘザーに視線を向けた。今度は、僅かばかりの悲しみと、切なさを乗せて。 愛しいアレッサ。 大好きだったアレッサ。 本来の聖女である筈の彼女が、神を信じないが故に答えに辿り着けない。 その皮肉めいた現実は、クローディアに失望を感じさせていた。 いや、理解はしている。 ヘザーがもう神の誕生を望んだアレッサではない事も、ヘザーが答えに辿り着けば自身の神が殺されかねない事も、良く理解している。 頭では、理解しているのだが――――未だに心の奥底は、彼女に対する微かな未練で疼いていた。 父親から体罰という名の虐待を受け、泣き喚くだけだった子供の頃の日々。 幸せだった覚えなど何も無かった、あの地獄の様な日々。 クローディアがアレッサと出会ったのは、その日々の中だった。 それは今はもう遠すぎる記憶で、最早断片的な映像でしかないけれども。 バルカン教会の中。ミサだっただろうか。母親に連れられたアレッサと、父親に連れられたクローディア。それが初めての出会いだったと記憶している。 幼かった二人が身の上話を交わすような事は無かったが、その暗い目と、傷だらけの身体を見れば、同じ様な境遇なのだろうとは直感的に感じ取れた。 彼女に自身を重ね合わせ、親近感はすぐに芽生えた。自然と仲良くなり、二人が一緒に過ごすようになるのには然程時間はかからなかった。 それからは――――アレッサとの時間だけが、クローディアの安らぎの時だった。アレッサだけが、クローディアに安らぎをくれた人物だった。 地獄の様な日々の中に見つけた、たった一つの安らぎの時。 アレッサは、クローディアを長い暗闇からを救い出してくれた恩人だったのだ。 ――こんな世界、なくなってしまえばいい―― いつだかに聞いたアレッサのあの言葉は、今も鮮明に浮かび上がる。 アレッサが神を降臨させる為の聖女だったのだと知ったのは、彼女を火事で失ってからしばらく経ってからの事。 それを知った時から、クローディアは誰よりもアレッサを特別視していた。 自分の大好きだったお姉ちゃんは、クローディアの心を救ってくれた様に、聖女として世界を救おうと考えていたのだと。 世界を創り直し、人々を楽園へと導く特別な存在になる為に、あの火災で生まれ変わったのだと。信じて疑わなかった。 だからこそクローディアは、神を降臨させるべく、司祭への道を進む決心をした。 全ては、アレッサの意志を引き継ぐ為に。アレッサを目覚めさせ、神を復活させる為に。 幼い頃に芽生え、抱き続けてきた大切な想い。 それを支えにしていたからこそ、クローディアは父親の虐待に堪え、辛い現実に心を擦り減らしながらも、ここまで歩んでくる事が出来たのだ。 それなのに――――漸く再会出来たアレッサは、この17年の間にすっかり変わり果ててしまっていた。 ヘザーの中に眠るアレッサと再会して突き付けられたのは、アレッサによる神の否定という、何よりも無慈悲で、残酷な、現実だった――――。 一度は壊れた筈の思い出。蓋をした筈の記憶。 それでも。 それらが砕け散った筈の今でも。 幼心の残滓は、この胸を締め付けている。 簡単に忘れられる筈がない。諦められる筈がない。アレッサは、クローディアの全てだったのだから。 そして――――その事を忘れられない、諦められない自分自身にも、クローディアは苛立ちを感じていた。 アレッサであるヘザーに抱いてしまう期待と、神を信じようとしないヘザーに生まれる失望。 失望を感じてしまう程に、未だにヘザーに期待を寄せてしまっている自身への嫌悪。 切り捨てるべきなのに、どうしても心の奥底から消せないアレッサへの想いと未練。 感情を殺した振る舞いの裏で、クローディアの中には様々な想いが生まれていた。 それは複雑に絡み合い、織り混ざり、強いやるせなさを募らせ、胸中に暗い澱みを創り上げる。 澱みは少しずつ、少しずつ、溜まり続け、胸の中で重みを増していく。 息苦しさを覚えたクローディアは静かに目を閉じると、静かに一つ、長い溜め息を吐いた。 胎内から、重く、鈍い痛みが、拡がり始めた――――。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 【Never Forgive Me, Never Forget Me】 「――――でさぁ、その漫画何かにつけて『世界が危ない』とか『人類は滅亡する』とかやたら煽りやがってさぁ。絵も何か怖えしよ。ガキだったから信じちまうじゃん? で、1999年になっても結局何にも起こりゃしねえだろ? あったま来ちまってさぁ。それで占いとかノストラダムスとか嫌いになっちまって――――」 「ねえ、ちょっと! さっきから黙って聞いてれば、その話が今何の関係があるの?」 「いや、だから――――って、なぁ、あのオバチャン大丈夫なのかよ?」 「……子供じゃないんだから平気よ。あの子なら化け物に襲われたって勝手に何とかするでしょ」 当面の目的を、教会にするか。それともヒナシロ高校の下見にするか。 その打ち合わせの途中から、少々、いや、相当話を脱線させていたアベは今、戸惑い気味の視線をヘザーとヘザーの後ろに行き来させていた。 それは、クローディアを一人で少し離れた場所にほったらかしにしている事が気がかりだからだろう。そう解釈して敢えて無視したのだが――――。 「そうじゃなくてさぁ……あれ、何か腹の調子でもワリィんじゃねーかな」 アベのその言葉に、ヘザーは目の色を変えて振り返った。 ――――クローディアが、腹部を押さえて蹲っていた。いつかのヘザーと同じ様に。 「便所連れてってやった方がいいんじゃねーか? 下痢って、すっげぇ辛――」 「ちょっと黙ってて!」 今はアベに構っている場合ではない。 剣幕に驚いた様に黙り込むアベには目もくれず、ヘザーはクローディアに歩み寄った。ベルトに挟んだ拳銃に、手だけは置きながら。 「そう言えば、教団も17年で少しは変わったみたいね」 無表情を装い、クローディアを見下ろす。 黒い司祭服に全身を包んだ幼馴染は、苦痛に歪ませた顔でヘザーを見上げた。 一瞬だけ絡み合った視線を緩やかに外し、襟元から覗く肌の様子を窺うと、見える範囲では白いままだ。 「その司祭服、あの人が着てたのに比べると随分とシックになった。それともあなたの趣味だったり?」 言い終えるや否やヘザーは、腹部を押さえているクローディアの片腕を取ると、それを捻り上げつつ、背後に回った。 勢いに流され、クローディアが呻き声を漏らしてアスファルトの地面に膝をつく。捻った腕を若干持ち上げ、左手で一息にその袖を捲れば、その下の肌もやはり白いまま。 神による侵食は、まだ最終段階にまでは進んでいない。 「丈が長すぎるのは私の好みじゃないけど。動きにくいったらないもの。すぐ汚れるし」 「……着てくれる、予定があったのかしら? アレッサ」 「……大昔には一応ね。でも今は絶対に願い下げ」 捻り上げていた腕を放すと、ヘザーはクローディアにはもう見向きもせず、ゆっくりと彼女から離れていく。 まだ、クローディアに拳銃を使う必要は無い。しかし、その時は、そう遠くは無い予感はあった。 かつての妹を、この手にかけねばならない“その時”は。 ――小さなクローディア。私の愛しき妹―― ヘザーの目に、うっすらと滲むものがあった。 たった今見た、面影の残る顔が、ヘザーの心を懐かしさで優しく揺らしていた。 無邪気に微笑みかけてくれていた、あの頃の顔と重なっていた。 本当なら、クローディアを殺したくはない。 アベに言った言葉は本心からのものだった。 無論ハリーを殺された恨みが完全に消えている訳ではないが、形はどうあれ一度は決着の着いた復讐だ。 クローディアへの殺意は全て、あの時産まれ出た神にぶつけてしまった。 結局、後に残ったものは父親を失った事の喪失感と、深い悲しみだけ。 復讐劇は、事件の一つの区切りにはなったものの、自己満足すら生んでくれなかった。――――ダグラスの、言っていた通りだった。 それを知ってしまった今。そして、父ハリーが、このクローディアの様に蘇っている可能性も否定し切れない今。 今回のゲームではヘザー同様に一参加者に過ぎないクローディアを、憎み切れない気持ちが確かにある。 出来る事なら、殺したくはない。 クローディアを、殺したくはないのだ。 だが、それでも。 神は、誕生させる訳にはいかない。 アグラオフォティスも手元に無いこの状況では、母胎として神を宿しているクローディアを殺さなくてはならない時は、いずれ必ず来る。 “その時”の事を想像すると、ヘザーの胸には仄かな悲しみが生じた。 恐らくは“その時”、この胸の悲しみは大きな痛みへと変わり、ヘザーを襲うのだろう。 今の自分には、クローディアを愛していた頃の記憶が、鮮明に思い浮かべられるのだから。 母親にも、クラスメートにも、誰にも愛されなかったアレッサだった自分を、たった一人愛してくれたクローディア。 あの頃の記憶が、鮮明に。 自分は果たして“その時”が来たら、躊躇わずにいられるのだろうか。 ヘザーが直接手を下そうが下すまいが、神が産まれればクローディアは死ぬ。どの道死ぬのならば、選択肢は一つだ。 神を殺す為には必ず撃たねばならないのだが――――この薄れ切った憎しみで、クローディアに引き金を引けるのだろうか。 その自信は、今は――――。 「……またスゲー顔してんな」 投げかけられた声に、反射的に目がいった。 見やれば、アベが呆気にとられた表情でこちらを眺めていた。 ――――引き金を引く覚悟は、今はする必要はない。目を細め、暗い思考を無理矢理に切り替える。 憂鬱を誤魔化そうとするかの様に。ヘザーはおどける様にアベに近付き、意地の悪い笑みを作った。 「そんな面白い顔してるあんたが言う? ねえエドワード、おじさんの顔見てごらん。笑える」 「って、何でお前までおじさんとか――」 エドワードがその言葉に従い、隣に立っていたアベに顔を向けた。 その気配に釣られて、アベはヘザーへの文句を止め、視線を下ろした。 数秒間、じっと顔を見合わせていた二人だったが、やがてエドワードの方が先程の様に顔を曇らせてしまった。 まずい――――ヘザーは慌ててエドワードに駆け寄り小さな身体を抱き締めたが、手遅れだ。エドワードは胸元に顔を埋め、小刻みに震え出していた。 「ちょっと、何してるのよ! 泣かせてどうすんの!」 「い、今のは俺のせいじゃねぇだろ!? 見ただけじゃねーか! 何で泣くんだよ! ……つーか、あっちはどうすんだ? ほっとくのかよ?」 「……あの子なら、良いの。あれはお腹の中の神様が元気に育ってる証拠だから」 「ああ、そういう事か…………って、それはそれでやばくねぇか?」 「心配しなくても大丈夫。いざとなったら私がロック・ボトムからのピープルズ・エルボーでスマック・ダウンしてやるんだから」 「お、おう。頼むぜ。……何だかよく分かんねーけど」 多少は慣れてきた手つきでエドワードの背中をさすりながら、ヘザーはクローディアの様子を横目で視認する。 彼女は、丈長のスカートに着いた汚れを払いながら立ち上がろうとしていた。もう痛みは引いたのだろう。 ほら、汚れた。口の中で呟き、視線を戻す。エドワードも、今度はすぐに落ち着いてくれた。 少年の頭を軽く撫で、ヘザーはアベを見上げた。 「それで、アベ。さっきの話――――」 アベに声をかけながら、立ち上がる――――その途中。 ふと首を巡らせたヘザーは、不自然に身体を硬直させた。 一つの影を、その目に捉えて。 【Letter - From The Lost Days】 ヘザーがその方向へと振り向いたのは、何気なくとしか言いようがなかった。 何かが視界に入った訳でもない。物音を聞いた訳でもない。 振り向いたのは、本当に理由など無く、ただ何気なくだった。 暗闇に隠れた日本の校舎から出てくる一つの影。それを、ヘザーはフェンス越しに見つけていた。 100m以上は離れた闇の中にも関わらず、不思議とその輪郭だけはくっきりと見て取れた。 それは、一人の人間のシルエットだった。 見覚えがある。 あの歩き方は、良く知っている気がする。 あれは、誰だったか――――。 一瞬後。 ヘザーは目を大きく見開き、全身を悪寒に震わせていた。 そんな馬鹿な。 居る筈がない。 見間違いだ。 それとも幻覚か。 幾つもの否定が瞬く間に浮かぶが、その影は目の中から消えはしない。 それどころか、凝視すればするほど、鮮明さを増していく様な気がした。 その、一人の少女のシルエット――――アレッサ・ギレスピーのシルエットは。 言葉としての形を成さない声が、半開きの口から零れ出た。 校舎の脇から奥の暗闇へと溶け込む様に消えていく人影に、目が惹き付けられていた。 固まるヘザーの横で、アベが心配した様子で声をかけてくるが、その声も今はどこか遠くに聞こえる。 人影が完全に見えなくなるまで、ヘザーはただ硬直し、それを眺めてしまっていた。 「――――よお! なあ! どうしちまったんだよ」 アベの声が、次第にボリュームを取り戻す。 だが、今のヘザーには彼の声に答えている余裕は無かった。 確かめなくては――――全身を包んでいた悪寒が、熱に変わる。 想いと熱に突き動かされる様に、ヘザーは目尻を吊り上げ、走り出していた。 単なる見間違いにしても、何かが居たのは確実だ。絶対に確かめなくてはならない。今の人影の正体が、何なのかを。 「ちょ!? おい! おぉい! 待てよ!」 「あんたはそこに居て! 二人をお願い!」 アベの返事を待たずに、ヘザーは校門を潜った。 背中にかけられる声も耳に入れず、グラウンド横の舗装された地面を駆け抜ける。 グラウンドを走るトラックに一瞬気を取られ立ち止まるが、運転席に誰もいない事を確認すれば、よくある事、と片付け追跡を続行した。 校門外の道路からでは暗くて距離感が掴めなかったが、実際に走ってみれば校舎脇に到達したのは30秒足らず。 肺に篭った息を吐き出し、その先にライトの光を差し込むと、校舎裏にはもう一棟の校舎が見えた。 左側には草木が生い茂っており、山中と殆ど変わらない様相。最早ミッドウィッチ小学校の名残は何処にもない。 人影は――――素早くライトの灯りを辺りに向けてみるが、見当たらない。 どこへ行ったのか。あの影は校舎の裏の方向ではなく、山の方へと消えていった様に思える。 ヘザーは上方へと続くであろう山道の側を照らした。痕跡らしき物は見当たらないが、つまりはこちらだ。 ――――後ろから、数人の走る足音が響いてきた。 肩越しに見れば、アベ達が追いついてくるところだった。 ヘザーの側まで来ると、息を切らしながらもアベは口を開いた。 「どう、したんだよ。いきなり」 「……あそこに居てって言ったじゃない」 「んなわけ、いかねーだろうが。あんな、ワケ分かんねートラックまで、走ってやがるし」 「よくある事」 「あり得ねーっつーの!」 「……人影を見たの。よく知ってる女の子のね。見間違いかもしれないんだけど」 「女の子?」 言葉を受け、アベは顔を上げるとあちらこちらに懐中電灯を回し始めた。 その光は人影を捉える事は無かったが、しばらくすると道の脇を射したまま、止まった。 「お、あれ……純金じゃね――――って、何だこりゃ? 看板?」 「純金と看板なんてどうしたら間違えられるの!? ボケるのもいい加減にして」 「いや……何か光った気がしたんだって」 「どうせ釘か何か――――ああ、もういい!」 「禁足」「立ち」「禁ず」「四鳴山」「太田」 拾ったボロボロの看板に書かれていた文字を、アベはぶつぶつと読み上げていたが、聞こえてくる声を無視してヘザーは再び山道を照らす。 やはり人影らしきものは見られない。――――だが。 「……ん?」 ライトの光がブレた。 いや、正確にはブレた訳ではない。ライトを動かしてみて理解する。ライトの光と重なる別の光が、山の上方で発生し始めたのだ。 光は、揺らめきを見せていた。何処か不安を駆り立てる光だった。あの人影は、そこに居るのだろうか。 一つ大きく呼吸をすると、ヘザーは心を決め、山道に足を踏み入れた。アベ達が僅かに遅れて、それに続いた。 ほぼ視界の取れない暗闇をライトの光で払い退け、四人は坂道を走り登る。 あの光。ヘザーは、心当たりがある様な気がしていた。 いや――――ヘザーは既に、確信に近いものを抱いていた。 胸の鼓動が勢いを強めていく。逸る気持ちがヘザーの足を次第にテンポアップさせていく。 光との距離が縮まるに連れ、徐々にその輪郭が明確になってきた。 「何だ、ありゃ?」 アベが率直に疑問を漏らす。 道から外れた山中の地面の上で、光が揺らいでいた。まるで、静かな海面に反射する陽光の様に。 草木と重なり合う様に存在する紋様。二重の正円の中に三角形を描いたその光。 それが何なのか、ヘザーには良く分かる。 それは、ヘザーが想定していたもの、そのものだったのだから。 生え渡る草木を踏み分けて、四人はそれに近付いた。 「これは……まさか、メトラトン……!?」 「メト……何?」 光を目前に、荒い呼吸を繰り返して立ち止まる中。当惑した面持ちで解答を呟いたのは、クローディアだった。 そう。地面に描かれているのは、見間違えようもない、あのメトラトンの印章。 17年前の事件で、アレッサ・ギレスピーだった自分が死を望んで描いた、神の力を消滅させる為の魔方陣だ。 それも、その光はかつての時よりも力強さを増している様に見える――――。 「アレッサ。あなたの見た女の子の人影って……?」 最早、決定的だった。 混乱して纏まりを見せない思考の中でも、その確信だけはある。 あの人影――――以前この街では、自身の抜け殻の様なものが襲いかかってきた事もあったが、あれはそんなものではない。 目の前のメトラトンの印章が、それを証明している。 あれは、見間違いや幻覚、抜け殻などではなく――――。 「……アレッサ……ギレスピー。……あの子が……あの子が、いた……」 ――――17年前の、自分自身なのだと。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ back 目次へ next YOU RE GONNA BE FINE 時系列順・目次 You re Not Here 復讐の女神 投下順・目次 You re Not Here back キャラ追跡表 next 静かな丘のリトル・ジョン ヘザー・モリス You re Not Here 静かな丘のリトル・ジョン 阿部倉司 You re Not Here 静かな丘のリトル・ジョン クローディア・ウルフ You re Not Here 静かな丘のリトル・ジョン エドワード(シザーマン) You re Not Here